熊本の本格焼酎
熊本の焼酎
熊本県南部の人吉・球磨地方は緑深き山々に囲まれた盆地。ここで造られる米焼酎は地域の名を冠として球磨焼酎と呼ばれている。
江戸時代、この地を治めた相良氏は二万二千石の小藩であったが、広い隠し田を持ち実質十万石の石高があったといわれる。また、水上村に源を発し、大小の支流を束ね八代海に注ぐ球磨川は日本三急流のひとつであり、九州を代表する清流としても知られる。
実り豊かな米と球磨の清らかな水、この地に伝わった確かな製法により米焼酎造りは盛んになっていった。盆地特有の寒暖の差も、風味豊かな米焼酎の味に一役買っている。
前山光則さんは酒をこよなく愛する人吉出身の作家。地元の山菜や川魚を食べさせてくれるなじみの料理屋“ふき”では杯を傾けながら、お話を聞いた。自分で飲んでみてうまいと思った蔵元は訪ねてみたくなると、英国のスコットランドから沖縄の波照間島まで、多くの醸造場を訪ね、造り手に直接話を聞いた。
どの蔵の人も酒造りの話になるといい顔をします。そのいい蔵元は地元を大切にしている。なかでも球磨焼酎は小さい頃、近所に蔵元があり、仕込みの香りの中で育ったようなもの。飲むと落ち着きます。私は昔ながらの常圧蒸留の焼酎が好きですが、減圧蒸留の球磨焼酎も軽い口当たりで多くの人に受け入れられ、飽きずに飲まれていますねと言う。
球磨焼酎には伝統的な酒器がある。白磁の徳利・ガラと小さな猪口・チョク。
返杯の際、チョクは両手で差し出さないと受け取れず、身分の高いものも酒の席では平等だったのであろうか。燗をつけた球磨焼酎は米のもつ貫禄ある風味が口に広がる。
酒は気分で飲むという面もあり、蔵の周りの風景や造っている人の顔が浮かびます。それに毎日飲む焼酎は、ほどほどにうまいのが健康の秘訣ですし、庶民文化を支えるのは手ごろな値段ですねとも。あなたは、球磨焼酎にどんな思いを馳せますか。