鹿児島の本格焼酎は生産量・消費量とも日本一を誇る
鹿児島を象徴する三つのS。
それが1)西郷隆盛、2)桜島、そして3)焼酎。
県内には百を越える酒造所があり、黒糖焼酎を造る奄美大島群島を除く、すべての蔵で芋焼酎が造られている。特産のサツマイモを原料とした芋焼酎は、今や全国的になり、広く飲まれている本格焼酎の代表選手ともいえるだろう。
芋焼酎がたどってきた道のりは決して平坦なものではなかった。
文献では十六世紀半ばには鹿児島で飲まれていたとある。
そのころの焼酎は米から造られており、芋焼酎が造られるようになったのは十八世紀始めころ。およそ三百年前、琉球から伝わったサツマイモ栽培が広まったころである。火山灰土のシラス台地では米の栽培は容易ではなく、薩摩の気候と土地に適したサツマイモから焼酎を造るようになった。
そもそも、サツマイモは長期保存が出来ない上、水分が多く、酒つくりは難しいと言われていた。
しかし、それを克服する情熱と創意が風味豊かな酒を生み、芋焼酎は鹿児島の魂の酒として栄えてきた。
薩摩地方は、焼酎用のサツマイモの栽培が盛んな産地のひとつ。丘陵地や平野には青々したサツマイモ畑が広がり、開門岳との優美なコントラストは、南薩摩を代表する風景となっている。
歴史的にもこの地方とサツマイモとのつながりは古い。1705年に琉球国から薩摩国山川郷(現在の指宿市山川町)の漁師・前田利右衛門がサツマイモを伝えた地でもある。
長々とサツマイモ栽培を受け継ぐ農家の人たちは、朝早くから仕事に励む。植付けは4月から始まり、収穫は8月から12月初旬。まるでわが子を扱うように土から掘り出す。
蔵元に運ばれた芋は、人の手により丁寧に手早く雑味のもとになる両端と痛んだ部分を切り取る。そして伝統に培われた研ぎ澄まされた枝によってメイドイン・鹿児島の焼酎となるのである。
鹿児島の人たちにとって酒といえば、芋焼酎のこと。
昔からこの地方では晩酌のことを、“だいやめ”といい、疲れを癒すという意味がある。
現代のだいやめは気軽にコップにお湯割りかロックが主流。お湯割りは芋の甘い香りが鼻腔をくすぐり、ロックはすっきりとうまい。
全国有数のカツオの水揚げ基地、枕崎市では、町のあちこちから鰹節を作るいい香りが漂ってくる。
港のすぐ近くにある(魚処 まんぼう)は地元の人にも観光客にも人気の店。
芋焼酎が、店自慢のかつお料理と地元の黒豚・かご豚料理の味わいを引き立てる。そこに仲間との会話があれば、一日の疲れは自然と癒えていく。
鹿児島県産サツマイモを使い、造りの全行程を県内で行った本格焼酎だけが名乗れる地域ブランドとして“薩摩焼酎”が誕生した。昨年12月22日付けで、国税庁から原産地表示の指定を受けたのである。
WTOの協定に基づき、1995年に始まった制度で、世界的にはワインのボルドーやブランデーのコニャックなどがあり、本格焼酎では、球磨焼酎(熊本)、琉球泡盛(沖縄)、壱岐焼酎(長崎)がある。
世界の銘酒として認められた鹿児島県産の芋焼酎は、ますます地域の誇りとなり、全国、そして世界へと、その味わいをひろめていくだろう。